湖底の泥

女子校6年の刑期を終えた女が赤裸々に泥のような呟きをするブログ

志乃ちゃんは自分の名前が言えない 女と女の話

映画 志乃ちゃんは自分の名前が言えない

を見てきました

 

百合そのものなキービジュに釣られてまんまと映画館まで行ってきたのですが、百合というより“女”の話で気づいたら泣いてました(楽しかった)

 

映画としてキャスティング、特に主演の南沙良さんが最高でこの子によってこの“女”という存在がより浮き彫りになっていたと思う

 

本来交わらない2人がコンプレックスをきっかけに絡み合う

長い時間をかけたわけではないのに確かに密度を持った、男によって簡単に崩れる脆い関係性

 

そんな女と女が好きな人にはおすすめ

 

予告編

youtu.be

 

あらすじ

吃音症の主人公 大島志乃は高校の入学式で名前が言えずクラスから浮いてしまう。お昼の時間も当然1人。自己嫌悪に苛まれながらどこか1人で食べられる場所を探していると同じく1人校舎裏の階段に座って音楽を聞いていた岡崎加代と出会う。次第に仲良くなっていった2人はバンドを組んで文化祭出演を目指すが、クラスのはみ出しもの菊池という男が仲間にいれてくれと言ってきてーーーー

 

ネタバレ(?)感想

 

大島志乃という人物の描き方が秀逸だった映画。

 

志乃ちゃんは吃音症で自分の名前が言えない。

でも、ただそれだけなんですよね。

 

顔もいい(南沙良さん本当に可愛い)、家庭環境も悪くない。ただ言葉として喋れないだけ。人のことも馬鹿にできるし流行りのお話だって楽しめる

 

だからこそ“普通の女子高生”に強い憧れを感じる。普通の女子高生らしく普通に弱者を馬鹿にするし、加代ちゃんの音痴な歌声聞いた時に笑った…そこには吃音の罪悪感はない

 

コンプレックスだらけの卑屈な子とか糞真面目な子って逆に人のこと笑わないんですよね。笑っちゃいけないことって分かっているから、嫌われたり怒られるようなことしないんですよ

 

志乃ちゃんは加代ちゃんのいう通り言い訳として吃音症を使うことはあっても、自分が劣っているとは全く思ってないんです。めっちゃ女ですよね。最高に顔面偏差値の暴力

 

そして菊池の登場

加代ちゃんについてあまり話していないのですがこの子もまあ女って感じでいいですよね

 

まず菊池を仲間に入れようと志乃ちゃんに話を持ちかけた時

別に入れる必要なくないですか?メリットありますか?もう志乃ちゃんという友達がいて一人でいなくていいんだから元いじめられっ子のうるさい奴なんて普通いらないですよね?

 

考えられる理由は菊池が男だということ

加代ちゃんは志乃ちゃんに比べて女っ気がないし趣味一直線のように見えて結局女だってことがここで突きつけられます

自転車の志乃ちゃんを後ろに2人で並んで歩くシーンも印象的。男によって壊される女の友情いいですね

 

少し話が戻りますが、そもそも別に特別歌が上手いわけじゃない志乃ちゃんとバンド組もうっていうのも面倒見がいいのも全部加代ちゃんに友達がいないからっぽい映画の撮り方がいい

 

高校生は誰よりも自分の居場所をクラスという小さな世界で見つけたがる生物です。自分のメリットも考えての行動。その先の信頼。俗ゆえのエモさがある

 

物語の終盤、アイスクリーム片手に菊池と言い合う志乃。このシーンが一番好きです。

菊池くんの自己中心的な考え方が、自覚のもとであったことが発覚するのもいいし

「なんで!どうして!」

と叫んで逃げ去る志乃ちゃんからは加代ちゃんという存在しか彼女にはないことがひしひしと伝わってきて泣けます。

 

このあと文化祭まで引きこもる志乃ちゃんの意思の硬さは好きになりました

 

そしてラストシーン

志乃ちゃんは加代ちゃんという狭い世界から抜け出し新たな友達を作っていく描写

 

志乃ちゃんのような女の子と加代ちゃんみたいな女の子って本来全く気が合わないんですよ

コンプレックスで繋がれた友情

 

平たく言うとウェイ寄りのパンピとオタクなんですもん。普通に喋れてたら陰キャだよね〜って影で言うタイプですよ映画の志乃ちゃん(熱い偏見)

 

本来の姿ではあるが、空虚感のある光がたくさん取り込まれている知らない女と志乃ちゃんのワンシーンは加代ちゃんとの日々が確かにあったことを思わせます

 

志乃ちゃんと加代ちゃんの間に友情以上の愛があったかと言われれば当然ないと思う。

というか友情もあったかどうかと思ってしまう。それぞれが誰かといたい、誰かとなにかしたいと思いが強かったように思えた

だから決して百合ではない(残念だけど)

 

それでも

恋に溺れるようなことはなく現実的で、でも同時に依存に近い友情がある女と女の話が存分に楽しめた映画でした

 

以上